軽貨物配送を個人事業主で始めるには?開業までの手順と、そろえるもの

開業までの手順は5つ。講習と初任診断は並行で進む 黒ナンバー基礎

軽貨物配送を個人事業主で始めるときは、税務署への開業届から、軽自動車検査協会での黒ナンバーの交付まで、5つの手順で窓口を順に回ります。なお、貨物軽自動車安全管理者講習と初任診断は、この5つの手順と並行して受けられます。

※この記事が対象にしているのは、軽バンや軽トラックで荷物を運ぶ仕事を、個人事業主として始める場合です。会社を作って始める場合と、雇われて配送の仕事をする場合は、対象に含めていません。

126cc以上のバイクを使う場合も、事業の種類は貨物軽自動車運送事業で変わりません。四輪と異なるのは、届出の後に行く窓口、ナンバープレートの色、貨物軽自動車安全管理者の選任義務の有無の3点です。

四輪の軽自動車は、軽自動車検査協会で手続きをして黒ナンバーの交付を受けます。一方、バイクは運輸支局の登録担当か自動車検査登録事務所で手続きをして、緑ナンバーの交付を受けます。

また、貨物軽自動車安全管理者の選任義務について、国土交通省は対象を「四輪以上の軽自動車を使用して貨物を運送する事業者」に限定しています。そのため、バイク便事業者に選任義務はありません。

※ここから先は、四輪の軽自動車を使う場合を前提に進めます。バイクの届出の手続きは扱っていません。


個人事業主で軽貨物配送をする場合と、雇われて働く場合の違い

個人事業主で軽貨物配送をする場合、仕事の契約、車と保険の用意、所得の申告は、すべて自分で行います。雇われて配送の仕事をする場合と比べると、次の3点を自分で決めて手配する必要があります。

1つ目の違いは、仕事の受け方です。個人事業主は運送会社や配送のサービス、荷主と契約を結んで仕事を受けますが、雇われて働く場合は雇用契約で、勤め先の指示を受けて働きます。契約で受けるなら、運ぶ荷物の範囲と報酬の決め方を、契約を結ぶ前に確かめます。

2つ目の違いは、車と保険です。近畿運輸局の案内では、事業を始める基準として運行管理体制を定めることと、車両の自賠責保険・任意保険の加入が挙げられています。そのため、車は自分で選び、任意保険も自分で契約します。

3つ目の違いは、所得の申告に向けた税務署への届出です。出す書類は、個人事業の開業・廃業等届出書と、青色申告にするなら所得税の青色申告承認申請書です。


開業までの5つの手順と、並行して進める講習・初任診断

開業までの手順は、動ける順に並べると5つになります。

  1. 税務署に、個人事業の開業・廃業等届出書を出します。
  2. 使う車を決めて、営業用の任意保険の手配を始めます。
  3. 運輸支局に、貨物軽自動車運送事業経営届出書を出します。運輸支局に出す書類の一覧と部数は、別の記事にまとめています。
  4. 軽自動車検査協会で、黒ナンバーの交付を受けます。
  5. 配送の仕事の受け先を決めます。

3番目の運輸支局への届出には車検証の写しが必要なので、車を決める手順を2番目に置いています。この写しは中古車を買う場合でも、リースやレンタカーで借りる場合でも必要で、車が決まらないうちは届出に進めません。

一方、貨物軽自動車安全管理者講習と初任診断は、どちらも運輸支局への届出より前に受けられます。

開業までの5つの手順と、並行して進めることを示した流れ図。税務署への開業届、車と任意保険、運輸支局への経営届出、軽自動車検査協会での黒ナンバー交付、仕事の受け先の5段に、窓口の名前を添えたもの。経営届出の段は、窓口を運輸支局または運輸監理部とし、その中に同じ窓口へ出す貨物軽自動車安全管理者の選任の届出を入れた。令和7年4月以降に経営届出を行う事業者は、経営届出の後、事業を始める前までに速やかに選任して届け出ること、届出には講習の修了証明書の写しを添付することを記した。右の帯は、並行して受けられる貨物軽自動車安全管理者講習と初任診断。初任診断は初めて事業用自動車に乗務する前に受け、やむを得ない事情がある場合は乗務開始後1か月以内と記した

この図は、手順の順番と、並行して進められることを示すために当社が作ったものです。


税務署に出す開業届と青色申告承認申請

開業のときに税務署へ出すのは、個人事業の開業・廃業等届出書です。青色申告で確定申告をするなら、所得税の青色申告承認申請書も出します。提出先は、どちらも納税地を所轄する税務署長です。

どちらの書類も、e-Taxで作成して提出できます。また、書面で作成し、税務署へ持参するか送付する方法も選べます。

税務署の手続きが済んだ後も、運輸支局に出す貨物軽自動車運送事業経営届出書の提出が必要です。窓口も様式も別なので、税務署に出す書類とは分けて用意します。

青色申告にするなら、開業届と承認申請を同じ日に出しておくと、2つの期限を別々に管理せずに済みます。なお、どちらの期限も、土曜・日曜・祝日等に当たる場合は、これらの日の翌日になります。

開業届の提出期限は確定申告の期限まで

開業届の期限を定めているのは、所得税法第229条です。同条は、提出の時期を「その事実があつた日の属する年分の所得税に係る確定申告期限までに」と定めています。国税庁の案内も、提出時期を「事業の開始等の事実があった日の属する年分の確定申告期限までに提出してください」としています。つまり、開業した年の所得を申告する確定申告の期限までに出せば、期限内です。

この期限が適用されるのは、令和8年(2026年)1月1日以後に生ずる開業の事実です。同日前に生じた事実については、附則で「なお従前の例による」とされています。

※改正前の期限は、この記事では取り上げていません。

青色申告承認申請の提出期限

その年の1月16日以後に開業した場合、所得税の青色申告承認申請書の期限は、事業を開始した日から2か月以内です。1月15日までに開業した場合は、その年の3月15日までに出します。

どちらの期限も、根拠は所得税法第144条です。同条は原則を「その年三月十五日まで」とし、その年の1月16日以後に業務を開始した場合を「その業務を開始した日から二月以内」としています。

青色申告にする場合、承認申請の期限は開業届の期限より先に来ます。ただし、承認申請を出すのは青色申告の承認を受けようとする人で、青色申告をしないのであれば提出は不要です。

税務署に出す2つの書類の提出先と期限をまとめた表。個人事業の開業・廃業等届出書と所得税の青色申告承認申請書について、提出先・期限・根拠の条文を並べたもの。開業届の期限の欄には、この期限が適用されるのは令和8年(2026年)1月1日以後に生ずる開業の事実であることを記した。青色申告承認申請の期限の欄は、1月15日までに開業した場合は申告をしようとする年の3月15日まで、1月16日以後に開業した場合は事業開始等の日から2か月以内と、場合を先に置いて記した。表の下には、どちらの期限も土曜・日曜・祝日等に当たる場合はこれらの日の翌日になることを1行で記した

図に書いた開業届の期限は、2026年1月1日以後に開業した場合に適用されます。


車の用意と、営業用の任意保険の手配

この記事は、車検証の用途の欄が貨物になっている軽自動車を前提にしています。

黒ナンバーの車の任意保険は、営業用の区分になります。たとえばソニー損保は、ナンバープレートが黒地に黄文字の車を営業用の車として扱い、契約を引き受けていません。ただし引き受けの扱いは会社ごとに違うので、黄ナンバーのときの契約のままでよいかは、契約している保険会社に確かめます。

なお、見積もりを取れるのは、使う車が決まってからです。保険料の目安と切り替えの手順は、黒ナンバーの任意保険の切り替え手順と保険料の目安にまとめています。

車検のときに納める重量税と自賠責保険料、毎年の軽自動車税は、軽貨物の車検と税金にまとめています。

車の用意は購入・レンタカー・リースの3通り

車の用意の仕方は、購入、レンタカー、リースの3通りです。どの方法でも開業の手続きに関わるのは、車検証上の名義(所有者・使用者)です。

買って用意する場合、車検証の所有者の欄は支払い方によって変わることがあります。分割払いでは、支払いが終わるまで売り主に所有権が残る契約もあります。そのため、買う場合も借りる場合も、車検証の所有者と使用者の欄に誰が入るかを、契約の前に確かめます。

また、運輸支局への届出には車検証の写しが必要なので、借りて用意する場合は、契約のときに写しを受け取れるかも確かめておきます。車検証の名義と、届出を出す人の名義の関係は、リースの車で届出を出すときの名義にまとめています。

黒ナンバーの登録を自分で行うのか、登録済みの車を受け取るのかは、借りる先によって変わります。さらに、車が手元に来るまでの日数も、契約の前に確かめます。リースの契約の前に確かめることの一覧は、月額の相場と、料金に含まれるものにまとめています。ローンやリースの審査に不安がある場合の確かめ方と選べる方法は、カーリース審査で落ちる理由と通りにくいときの選択肢にまとめています。


運輸支局に出す経営届出と、貨物軽自動車安全管理者の選任

軽貨物配送の正式な事業の名前は、貨物軽自動車運送事業です。届出書を出す先は、営業所の所在地を管轄する運輸支局または運輸監理部で、事業を始めるのに先立って提出します。なお、使う車両は1両から始められます。

出す書類の名前と部数、様式の書き方、車庫の基準は、運輸支局に出す書類一式と記入例にまとめています。

経営届出を出したら、貨物軽自動車安全管理者を選任します。令和7年4月以降に経営届出を行う事業者は、届出後、事業を開始する前までに速やかに選任する必要があります。選任するのは、一人で事業を行う場合は基本的に自身ですが、配偶者などの家族従業者でもかまいません。

選任できるのは、貨物軽自動車安全管理者講習を選任の日前2年以内に修了した人などです。この講習は5時間以上で、選任の届出には修了証明書の写しを添付します。講習の中身と、選任の後に続く記録の付け方は、安全管理者の選任と講習の中身にまとめています。


配送の仕事の受け方は業務委託・配送サービスへの登録・直接契約

配送の仕事の受け先は、運送会社、配送のサービス、荷主に分かれます。どこと契約するかで、契約の相手と、運賃を誰が決めるかが変わります。

運送会社からの委託と、配送のサービスへの登録では、契約の条件が受け先ごとに違います。そのため、運ぶ荷物と配達する区域、案件の選び方は、登録する前に確かめます。

荷主との直接契約では、荷物を出す相手と自分で契約を結びます。運賃と料金は自分で決めますが、愛知運輸支局の案内は、荷主に対して不当とならないように設定することを求めています。また、特定の荷主が決まっている場合は、荷主と相談して定めることもできます。

受け先ごとの条件と、手元に残る額は、委託先4ルートと手取りの計算のしかたにまとめています。


開業届を出す前に配送の仕事を受けてよいか

税務署への開業届より先に配送の仕事を受けても、期限内に開業届を出せば間に合います。ただし、運輸支局への経営届出と貨物軽自動車安全管理者の選任、初任診断、営業用の任意保険の手配は、配送の仕事を始める前に済ませます。

経営届出は事業を始めるのに先立って出す決まりで、貨物軽自動車安全管理者は経営届出の後、事業を開始する前までに選任します。また、初任診断を受けるのは、初めて事業用自動車に乗務する前です。いずれも、配送の仕事を始める日が期限の基準になります。

一方、開業届の期限は申告の期限を基準にするので、仕事を始めた日からの日数では数えません。そのため、黒ナンバーの交付を受けた後に出しても、期限内なら間に合います。黒ナンバーの手続きの順番は、黒ナンバーを取得する4ステップにまとめています。


開業までにそろえるもの

開業までにそろえるものは、次の8点です。

運輸支局への届出そのものに費用はかかりません。この届出を含めて開業までにかかるお金の総額は、開業にかかる費用の内訳にまとめています。

開業までにそろえるもののチェックリスト。運転免許証から開業届までの8項目を、どこで用意するかと並べて示したもの。初任診断の行には、初めて事業用自動車に乗務する前に受け、やむを得ない事情がある場合は乗務開始後1か月以内であることを記した。アルコール検知器の行には、呼気中のアルコールを検知してその有無または濃度を示すもので、点呼で酒気帯びの有無を確かめるときに使うことを記した

講習の修了証明書は安全管理者の選任の届出に添え、初任診断は初めて事業用自動車に乗務する前に受け、アルコール検知器は点呼で酒気帯びの有無を確かめるときに使います。

なお、GOKUリースの場合、運輸支局への届出に添える車検証の写しは、納車のときにお渡ししています。届出の書類は借りる方ご本人が書いて出すため、写しが手元に無いと届出に進めません。納車の時点で写しがそろっていれば、取り寄せを待たずに届出の手続きに入れます。

お貸しする軽バンは、当社が所有者として登録し、黒ナンバーの登録を済ませた状態でお渡しします。

※行政の手続きの代行と、届出書類の書き方のご案内は行っていません。


まとめ

まず、開業する日を決めて、貨物軽自動車安全管理者講習の日程を調べましょう。講習は選任の日前2年以内に修了していれば足りるので、車を決める前でも受けられます。日程が決まったら、車を選んで車検証の写しを用意し、運輸支局への経営届出に進みます。そして、安全管理者の選任を済ませ、初任診断を受け、任意保険を営業用の契約にして、黒ナンバーの交付を受けたら、配送の仕事を受けられます。


出典


著者

中村 篤彦(なかむら あつひこ)/株式会社極 代表取締役/GOKUリース運営


この記事は役に立ちましたか?