黒ナンバーは取れても、「仕事はあるのか」と「いくら手元に残るのか」が分からないままでは動けません。
仕事の入口は4つ、手取りは売上から固定費・手数料・税を引いた残り
- 仕事の取り方は、①大手配送会社からの委託 ②マッチングアプリ ③元請・荷主との直契約 ④スポット案件 の4つ。
- 単価の形は個建て・時間制・チャーター(日建て)の3通り。軽貨物には国が示す標準的な運賃がなく、単価は委託先ごとの提示と地域の相場で決まります。
- 売上はそのまま収入になりません。事業の固定費(車両・保険・燃料・通信)、委託手数料、税と社会保険を引いた後が手取りです。
- 単価の高い案件を取れても、繁閑や稼働できない日をどう織り込むかで年間の収入は変わります。
- 保証金・高額な研修費・車両購入とセットの契約には、フリーランス法と特定商取引法で確認できる決まりがあります。
荷物の量は増えている(宅配便は年50億個)
国土交通省の集計では、2024年度(令和6年度)の宅配便取扱個数は50億3147万個で、前年度より2414万個・0.5%増えました。
国土交通省も、軽貨物の安全対策を強化する制度改正(令和6年10月1日 報道発表)の背景として、「EC(電子商取引)市場規模の拡大により宅配便の取扱個数が増加しており、物流センターや小売店を介して消費者に荷物を運ぶ手段として、軽自動車による運送需要が拡大している」と説明しています。
出典:国土交通省「令和6年度 宅配便・メール便取扱実績について」(令和7年8月公表) / 国土交通省「貨物軽自動車運送事業における安全対策を強化するための制度改正を行いました」(令和6年10月1日 報道発表) (いずれも2026年7月確認)。
仕事の取り方は4ルート(大手委託・アプリ・直契約・スポット)

| ルート | 入り方 | 主な条件 | 向く人 |
|---|---|---|---|
| ①大手配送会社からの委託 | 大手の配送を請けている軽貨物会社の募集に応募し、業務委託契約を結ぶ | 黒ナンバー・事業用の任意保険・スマホ。多くは週5〜6日の固定稼働 | 未経験から始める人/毎日の物量を安定させたい人 |
| ②マッチングアプリ・プラットフォーム | アプリに登録し、表示された案件を自分で選ぶ | 黒ナンバーの車両、任意保険。免許歴の条件が付く登録区分もある | 稼働日を自分で決めたい人/①の空き時間を埋めたい人 |
| ③元請・荷主との直契約 | 地場の運送会社や荷主に直接営業して契約する | 実績・車両・保険に加え、請求と入金の管理を自分で行う | 経験を積んで単価を上げたい人 |
| ④スポット案件 | 単発の緊急便・チャーター・繁忙期の応援を都度受ける | ②のアプリ経由か、地場の会社からの依頼 | 収入の谷を埋めたい人/曜日が不規則でも動ける人 |
①大手配送会社からの委託
宅配の大半を占めるのは大手の便です。前述の国土交通省の集計では、トラック運送による宅配便のうち上位3便(宅急便・飛脚宅配便・ゆうパック)だけで約95.2%を占めています。
ただし、個人が大手と直接契約するケースは多くありません。大手 → その配送を請けている軽貨物会社 → 個人ドライバー、という順に委託されるのが一般的で、募集を出しているのは間の軽貨物会社です。物量が安定しやすい代わりに、後述する委託手数料が差し引かれる契約もあります。
一方で、Amazonのように個人が直接登録できる仕組みもあります。車両条件や稼働パターンごとの収入の試算はAmazon Flexで使う車両の用意にまとめています。
②マッチングアプリ・プラットフォーム
荷主と車を直接つなぐアプリに登録し、表示された案件を選んで受ける形です。登録の条件と支払いの条件は公開されていて、たとえばハコベルの軽貨物パートナーでは次のように示されています。
- ドライバーとして登録する場合:ナンバーが「4○○」「8○○」(冷蔵車・冷凍車)で始まる黒ナンバーの車両であること(軽トラックは荷台に屋根または幌が付いていること)。提出書類は運転免許証・車両写真・自動車検査証・自動車任意保険証。貨物保険は軽貨物車両では必須ではなく、加入を推奨
- 配車マンとして登録する場合:黒ナンバーの車両を所有し、普通自動車免許の取得から1年以上経過していること。任意保険は対人対物補償が無制限であること
報酬は月末締め・翌月25日払いで、毎月第1営業日にアプリ上で前月分の金額を確認・同意したうえで支払われます。株式会社セブン・ペイメントサービスと提携した現金即払いのサービスもあり、こちらは利用料がかかります。PickGoも、対象は黒ナンバー車両を持つ個人事業主で、最短即日入金をうたっています。
出典:ハコベル軽貨物パートナー「ドライバー登録・審査について」 /「報酬の支払い」 /「現金即払いサービス」 / PickGo「軽貨物パートナー募集」 (いずれも2026年7月確認)。登録の条件・支払いの条件は各社が変更する場合があります。
③元請・荷主との直契約
間に入る会社が減るほど、同じ荷物でも手元に残る額は増えます。地場の運送会社や、自社便を出している荷主と直接契約する形です。
その代わり、案件の獲得・請求・入金管理・代替要員の手配まで自分で背負います。実績のない状態でいきなり狙うより、①②で稼働と実績を作ってから増やしていくほうが現実的です。
なお、多重下請けの構造には制度側の動きもあります。2026年4月1日から、貨物自動車運送事業者と貨物利用運送事業者に対して再委託の回数を2回以内とする努力義務が課され、これまで貨物自動車運送事業者にのみ課されていた運送契約締結時の書面交付義務等が、貨物利用運送事業者にも新たに課されることになりました。
出典:国土交通省「改正物流効率化法・改正貨物自動車運送事業法(令和8年4月1日施行分)」 (2026年7月確認)。
④スポット案件(単発・チャーター)
引越しの応援、企業の緊急便、繁忙期のEC配送など、単発で受ける仕事です。②のアプリ経由が入口になることが多く、金額は1件ごとの提示です。
固定の委託だけだと、担当エリアの物量が落ちた月にそのまま収入が落ちます。スポットを混ぜられる状態にしておくと、その谷を埋められます。
単価の形は個建て・時間制・チャーターの3つ
国土交通省が「標準的な運賃」として告示しているのは、一般貨物自動車運送事業に係る運賃です(令和6年国土交通省告示第209号・令和6年3月22日告示)。同省の「標準的な運賃」のページでも、対象として挙げられているのは一般貨物自動車運送事業のみで、貨物軽自動車運送事業(=黒ナンバー)への言及はありません。告示の対象事業に軽貨物は含まれていない、というのが公表資料から読み取れる範囲です。単価は委託先ごとの提示と地域の相場で決まります。
| 形 | 決まり方 | 出やすい案件 |
|---|---|---|
| 個建て | 1個・1件あたりの単価 × 個数 | 宅配、ECの配送 |
| 時間制・日建て | 1日あたりの固定額(拘束時間で決まる) | 企業配、ルート便 |
| チャーター | 1台を貸し切る運賃(距離・時間で見積もる) | スポット、緊急便 |
配送会社が自社サイトで公開している目安では、個建ての配送単価は約150〜200円、深夜・早朝や危険物、時間指定が厳しいなどの条件が付く案件で270円という例が紹介されています。企業配の固定日額は1日あたり約15,000〜18,000円、フルタイム稼働の一般的な相場は1日10,000〜15,000円とされています。これらは公的な統計ではなく事業者が示す目安で、地域・時期・委託先で変わります。
募集要項の単価だけでは比較できません。同じ「1個180円」でも、1日の担当個数、置き配の可否、再配達の扱い、待機時間が報酬に含まれるかで、時間あたりの実入りは変わります。比べるときは、単価ではなく「1日の拘束時間あたりいくらか」に直すと、案件どうしを同じ物差しに乗せられます。
出典:国土交通省「『標準的な運賃』について」 / 株式会社ギオンデリバリーサービス「軽貨物配送の単価の相場」(2025年1月公開/2026年1月更新) (いずれも2026年7月確認)。
売上ではなく手取りで見る(委託手数料と税・社会保険を引いた後)
軽貨物の募集でよく見る「月収40万円以上可」は、ほぼ売上(報酬総額)の話です。個人事業主なので、そこから次の3つを自分で払います。

- 事業の固定費 — 車両費(購入なら車両代・車検・整備の積立、リースなら月額)、任意保険、燃料、通信、駐車場など。金額の内訳は黒ナンバー取得の費用にまとめています
- 委託手数料(ロイヤリティ) — 委託会社に支払う手数料。売上に対する率か、月額固定
- 税・社会保険 — 国民年金、国民健康保険、所得税・住民税、個人事業税、消費税(課税事業者の場合)
委託手数料は、売上に対して10〜15%程度と説明している事業者があります。契約時に見ておきたいのは、提示された個建て単価が手数料を引く前なのか、引いた後なのかです。契約書のどちらの建て付けかで、同じ「15%」の意味が変わります。
出典:株式会社Lic「軽貨物のロイヤリティ」(2022年12月公開) / 前掲の株式会社ギオンデリバリーサービス「軽貨物配送の単価の相場」(いずれも2026年7月確認)。手数料の相場は各社が公開している目安で、委託先により異なります。
試算(前提を置いた一例)
前提:時間制で1日15,000円(上記のうち「フルタイム稼働の相場 1日10,000〜15,000円」の上限)× 月25日稼働=売上375,000円。固定費は上記の費用記事で置いている月65,500円のモデル(リース料30,000円・任意保険10,000円・ガソリン17,500円・通信3,000円・その他5,000円)をそのまま使用。委託手数料は売上の15%。国民健康保険料は自治体と前年所得で変わるため25,000円と仮置き。
| 項目 | 金額(月) |
|---|---|
| 売上 | 375,000円 |
| 事業の固定費 | △65,500円 |
| 委託手数料(売上の15%) | △56,250円 |
| 差引 | 253,250円 |
| 国民年金保険料(令和8年度・月額17,920円) | △17,920円 |
| 国民健康保険料(仮置き) | △25,000円 |
| 手元に残る目安 | 約210,000円 |
この前提では、売上375,000円に対して手元は約21万円です。ここからさらに所得税・住民税と、次に触れる個人事業税が年単位でかかります。売上・手数料・保険料のどれが動いても金額は変わるので、押さえるべきは引かれる順番です。
出典:日本年金機構「国民年金保険料」 (2026年7月確認)。令和8年度の国民年金保険料は月額17,920円。
見落とされやすい税金 ― 運送業には個人事業税がかかる
軽貨物で開業して数年経ってから驚かれるのが個人事業税です。運送業は個人事業税の第一種事業(税率5%)に区分されています。事業主控除が年間290万円あるため、所得がそれ以下なら課税されませんが、超えた分には課税されます。
上の試算の差引額(253,250円 × 12ヶ月=約304万円)で計算すると、(304万円 − 290万円)× 5% = 年間約7,000円。ただしこの304万円は、減価償却を計上しておらず、青色申告特別控除を引く前で、社会保険料も控除していない金額です。実際の課税所得はこれより下がることが多く、290万円を下回れば課税されません。金額の大小より、8月・11月に納税通知が届くことを知らずに資金繰りを組んでいると効きます(大阪府の場合。申告は3月15日まで、納付は原則8月と11月の年2回)。
消費税は、免税事業者から課税事業者になった人向けの「2割特例」が個人事業主では2026年分で終わります(期日は黒ナンバー 安全管理者の選任・講習・記録の実務にまとめています)。
出典:大阪府「個人事業税」 / 国税庁「令和8年度税制改正 インボイス関連(2割特例)」 (いずれも2026年7月確認)。税率・控除額・納期は都道府県により扱いが異なる場合があります。
繁閑と、稼働できない日を織り込む
繁閑を先に知っておく。宅配はお中元・お歳暮の時期と年度末に増え、その反動で落ちる時期があります。売上がいい月の数字で固定費を決めると、落ちた月に苦しくなります。低い月の売上で固定費が回るかで見ておくほうが安全です。
車が止まる日を織り込む。車検・整備・体調不良で稼働できない日は必ず来ます。代車の有無と、そのとき契約がどうなるかを最初に確認しておくと、慌てて条件の悪い仕事に乗り換えずに済みます。
保証金・高額な研修費・車両購入とセットの契約は、書面で条件を確認する
募集の中には、契約の入口で費用の負担を求めるものがあります。違法とは限りませんが、確認できることが法律で決まっている領域です。
取引条件の明示は、発注する側の義務です。2024年11月1日に施行されたフリーランス・事業者間取引適正化等法(フリーランス法)では、発注する事業者に対し、業務委託をしたときの給付の内容・報酬の額などを書面または電磁的方法で明示することが義務づけられています。あわせて、期日における報酬の支払い、買いたたきや受領拒否などの禁止行為も定められています。条件が口頭のままで契約を急がせる募集は、この時点で確認が必要です。
「仕事を提供する」という誘い文句とセットの購入契約には、クーリング・オフがあります。仕事を提供するので収入が得られるという口実で勧誘し、その仕事に必要だとして商品などを買わせて金銭の負担を負わせる取引は、特定商取引法の業務提供誘引販売取引にあたります。この場合、法律で決められた書面を受け取った日から数えて20日以内であれば、書面または電磁的記録により契約を解除できます。車両やシステムの購入・ローンが仕事の紹介とセットになっている契約は、この枠に入らないかを確認してください。
荷主からの運送委託が、2026年1月から取適法の対象に加わりました。下請法を改正・改称した中小受託取引適正化法(取適法)が2026年1月1日に施行され、対象取引に「特定運送委託」=製造等の目的物の引渡しに必要な運送の委託が追加されました。運送事業者が受けた運送をさらに他社へ委託する取引(役務提供委託)は以前から対象で、今回は荷主が運送事業者へ委託する取引が加わった形です。対象になるかは、委託する側の資本金または従業員数(資本金3億円超、従業員300人超など)で決まります。対象になる場合、委託する側には発注内容を書面または電磁的方法で明示する義務、受領日から起算して60日以内で支払期日を定める義務、買いたたきの禁止などが課されます。
契約前に確認しておきたいのは、次の点です。
- 報酬の計算方法(個建てか日額か・手数料を引く前か後か)と、締め日・支払日
- 保証金・研修費・システム利用料・車両代の総額と、途中でやめたときの扱い
- 専属条項(他社の仕事を受けられるか)と、契約期間・解約の条件
- 物量が減ったときに報酬がどうなるか
- 上記がすべて書面に書かれているか
条件で揉めたときの相談先も公開されています。契約や仕事上のトラブルはフリーランス・トラブル110番(第二東京弁護士会が運営、弁護士に無料で相談できる窓口)、購入契約に関する相談は消費者ホットライン(188)で、地方公共団体が設置している最寄りの消費生活相談窓口を案内してもらえます。
出典:公正取引委員会「フリーランスの取引適正化に向けた公正取引委員会の取組(フリーランス・事業者間取引適正化等法)」 / 公正取引委員会「2026年1月から『下請法』は『取適法』へ!」(取適法リーフレットNo.01・令和7年8月) / 消費者庁 特定商取引法ガイド「業務提供誘引販売取引」 / 消費者庁「消費者ホットライン」 / フリーランス・トラブル110番(第二東京弁護士会) (いずれも2026年7月確認)。
よくある質問
Q. 黒ナンバーを取る前に仕事を決めておくべきですか。
多くの委託先とアプリは、登録の時点で黒ナンバーと事業用の任意保険を求めます。順番としては、車を用意する → 黒ナンバーを取る → 任意保険を事業用に切り替える → 登録・応募、が動きやすい流れです。黒ナンバーそのものの取り方は黒ナンバーとはにまとめています。
Q. 業務委託と、配送会社のアルバイトは何が違いますか。
雇用ではないため、雇用保険と有給休暇はありません。車両費・燃料・保険を自分で負担し、確定申告も自分で行います。労災保険は労働者向けの制度ですが、「一人親方その他の自営業者」の特別加入制度があり、自動車を使って貨物運送を行う個人事業主(個人貨物運送業者)はこの対象に含まれます。加入は、労働局の承認を受けた特別加入団体を通じて申請します。ただし個人貨物運送業者は、住居と就業の場所との間の往復の実態が明確でないことなどから、通勤災害は保護の対象外です。時給や日額だけを見て求人と比べると、比較の土台が違います。
Q. 開業したあとに必要な手続きは他にありますか。
2025年4月から、黒ナンバーの事業者には安全管理者の選任・講習の受講・業務記録と事故記録の作成保存が義務づけられています。内容と期限は黒ナンバー 安全管理者の選任・講習・記録の実務にまとめています。
出典:厚生労働省 神奈川労働局「労災保険の特別加入制度(一人親方その他の自営業者)について」 / 株式会社ギオンデリバリーサービス「軽貨物の労災保険・一人親方労災保険」(2025年4月公開) (いずれも2026年7月確認)。特別加入の申請は特別加入団体が労働基準監督署長を経由して都道府県労働局長に行います。
著者
中村 篤彦(なかむら あつひこ)
株式会社極 代表取締役/GOKUリース運営
最終更新日:2026年7月
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